FAQ
1.研究開発の生産性を測る物差しは?
基本的にはROR(Return on Research,研究開発投資に対する見返り)で計測すべきと思うが、投下するR&D費は明確に把握できても見返り(受益額)をどう捉えるかが問題である。例として、新製品の売上の3%(5年分)+改良品の売上の2%(3年分)+工程改善の節約額などが提案されているが、業種やその企業の置かれている立場によって異なる。最も大切なことは、その企業の経営戦略への貢献である。経営戦略から見て、研究開発部門への期待を明確にすることである。現行品の売上維持であれば改良品の売上で測るべきであり、新しい市場への進出が経営の主眼であれば新商品の売上で測るべきである。いづれにしても、経営戦略が事業戦略、商品戦略、マーケティング戦略と正しく翻訳され、研究開発戦略の目的・目標が経営目標と連動している場合のみ研究開発の生産性を測る意味がある。


2.新商品ヒットの秘訣は?
Dog Yearと評されるほど新陳代謝の激しい時は逓減・逓増の法則が支配する。2番手でそこそこ売れることを期待できない。スピードのみ、他社に先駆けて市場に提案することがヒットの秘訣である。研究開発部門が納得いくまで性能を確認してから生産部門へなどと言う悠長さは許されない。マーケティング部門、生産部門と最初から一丸となってR&Dを進めねばならない。また、いささか逆説的になるが、ニーズを求めマーケット・インとかマーケット・オリエンテッドと言うのは見直した方が良い。ニーズを発見してからシーズ(技術等)を準備していたのでは間に合わない。初めから商品(性能、価格)を目標に決め打ちするか、ある程度シーズを伸ばし、ニーズを迎えに行くアプローチが必要になる。


3.新規事業成功のKFSは?
新規事業は、俗に落下傘と呼ばれるように、現事業から離れていると成功しないと言います。しかし、老舗の味噌メーカが半導体メーカに変身した例が示すようにKFSは別にあると思います。
1.持っている能力を活用すること
自社が保有する能力には疎いものです。無いものねだりをするより、既に保有しているものを活かす新規事業を企画すべきです。先の味噌メーカでは「パートの動員力」「清澄な水」「シリコンアイランドの中心という地の利」です。
2.現業から切り離す
既存事業で最適化したマネジメント等の多くの仕組みが、まったく様相の異なる市場を対象にした新規事業では足を引っ張ることが多いようです。特に新規事業のフットワークを軽快にするには、既存事業はサポート役に徹し、判断(即ち、責任)や行動は新規事業の自主性に委ねるべきです。人事考課などは成功報酬を明確にして、やる気を刺激すべきです。
3.小規模組織を維持する
新規事業は、メンバ1人ひとりが最大限に力を発揮せざるを得ない規模を維持すべきです。どんな些細な事でも、他人事とは思えない規模(50人〜100人)に止め、分裂しながら成長する戦略を採用すべきです。


4.業務改善と業務改革の違いは?
業務改善と業務改革は全くの別物です。業務改善とは、業務プロセスを構成する一つひとつの作業の効率を上げると業務の生産性が上がると言う考えに基づくものです。一方、業務改革は演繹的なアプローチで、業務の生産性を上げるには、どの業務の効率を上げるべきかと考えることから始めます。業務改善が、作業全体の効率化を図ろうとして運動論や精神論に陥り易い傾向を持つ反面、業務改革は即効性で成果が早い利点があります。


5.IT利用で生産性は向上する?
ITを利用すれば生産性が上がると期待するのは間違っています。ITは単なる道具に過ぎません。切れ味の良い包丁を使えば料理が美味しくなり、レストランは繁盛すると考えますか。まず、経営的に見て、どの業務の生産性を上げるべきか。その作業のボトルネックはなにか。そのボトルネックを解消する方法には何があるかと考え、その最適な手段がITであれば、IT利用で生産性は向上します。ITは切れ味の鋭い道具です。現在では、IT抜きに業務を進めることは困難になっていますが、帰納的にITを利用して何ができると考えるのではなく、演繹的にITが必要かと考える方がITの力を充分に発揮できると考えます。